第3部|取得編 ―― データを集める
第8章 アンケートをAIと設計する ── 偏りの少ない問いの作り方
この章の要点
- アンケートは「設問の設計」で、得られる情報の質が決まる
- 二択・リッカート・複数選択・自由記述を、目的に応じて使い分ける
- AIは設問づくりの相棒。ただし「誘導的な問い」を見抜くのは人間
アンケートは、最も身近なデータ取得
データを集める方法の中で、最も手軽で、最も身近なのがアンケート(調査票)です。オンラインなら手軽に配布・回収でき、定量化しやすいデータが得られます。
けれど、手軽だからこそ、落とし穴も多い。設問の設計が甘いと、集めたデータがまるごと使い物にならないことがあります。「設問の質=データの質」なのです。
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設問の「形式」を使い分ける
設問には、いくつかの形式があり、それぞれ得意・不得意があります。
- 二択式(はい/いいえ):最もシンプルで答えやすい。ただし、ニュアンスや程度は捉えられない。
- リッカート尺度(5段階評価など):満足度や評価を段階的に捉えるのに有効。最もよく使われる形式(=順序変数)。
- 複数選択式:複数の選択肢から選べ、多面的に捉えられる。
- 自由記述式:個々の語りを反映でき、質的データとしても使える。ただし集計は手間(ここでAIが効く)。
たとえば、新しいサービスの初期検証では、購入意向の5段階評価が定番です。
- 絶対に買うと思う 2. たぶん買うと思う 3. どちらとも言えない 4. たぶん買わないと思う 5. 絶対に買わないと思う
これで「感覚的な反応」を定量的に可視化し、アイデア段階で市場性の目安を得られます。さらに「なぜ買いたい(買いたくない)と思ったか」を自由記述で添えれば、量と質の両方が一度に取れます。
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最大の敵は「バイアスのある設問」
アンケート設計で、初心者が最も陥りやすい罠。それは、答えを誘導してしまう設問です。
- 「この素晴らしいサービスに、満足していただけましたか?」 → 「素晴らしい」が誘導している
- 「運動不足は健康に悪いと思いますか?」 → 答えが分かりきっている(聞く意味がない)
- 「価格と品質、どちらが大事ですか?」 → そもそも二択にできない問い
こうした誘導的・曖昧・二者択一すぎる設問は、データを歪めます。良い設問は、中立で、具体的で、一つのことだけを聞きます。
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AIは、設問の「設計者」であり「批評家」
ここでAIが二つの役割を果たします。
一つは設計者として。「このサービスの初期検証に使うアンケートを、リッカート尺度と自由記述を組み合わせて10問作って」と頼めば、たたき台が出てきます。
もう一つ、見落とされがちですが強力なのが批評家としての役割です。自分が作った設問をAIに渡し、
「この設問に、回答を誘導するバイアスや、曖昧さはありませんか? あれば指摘し、改善案を出してください」
と聞く。これは『概論』で紹介したSelf-Critique(自己批評)の応用です。人間は自分の作った問いの偏りに気づきにくいもの。AIの"第三者の目"が、設問を磨いてくれます。
ただし最終判断は人間です。AIの改善案が、あなたの本当に知りたいことから逸れていないか。そこは、あなたが見極めてください。
試してみるプロンプト(設問バイアス・チェッカー)
あなたは調査設計の専門家です。 以下は、わたしが作ったアンケートの設問案です。 各設問について、(1) 回答を誘導するバイアス、(2) 曖昧さ・複数の意味、(3) 答えにくさ、の3観点でチェックし、問題があれば中立で明確な設問に書き換えてください。 また、リッカート尺度にすべき設問、自由記述にすべき設問の提案もしてください。
【設問案】 (ここに自分のアンケート設問を貼る)
第8章のまとめ
- アンケートは「設問の質=データの質」。形式を目的に応じて使い分ける
- 最大の敵は「誘導的・曖昧な設問」。バイアスがデータを歪める
- AIは設問の「設計者」かつ「批評家」。ただし、知りたいことの軸を持つのは人間