第3部|取得編 ―― データを集める

第9章 質的データを取る ── 語り・観察・言説をAIで支える

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この章の要点

  • 質的データの代表は、インタビュー・参与観察・言説分析
  • 構造化/非構造化インタビューを、目的(探索か検証か)で使い分ける
  • AIは文字起こし・整理・分析を加速し、質的研究のハードルを劇的に下げる

「語り」から、意味を引き出す

数値では捉えきれない「なぜ」を掘るのが、質的データです。代表的な手法を3つ、見ていきましょう。

手法①:インタビュー ── 対話から価値観を引き出す

インタビューは、相手の語りを通じて、思考や感情、行動の背景にある意味を理解する手法です。大きく2タイプあります。

非構造化インタビュー  細かい質問を決めず、自由に語ってもらう。「最近使ってよかったものを教えてください」「なぜそれを選んだと思いますか?」のようなオープンな問いが中心。  → 仮説を立てる前の探索段階や、予想外の気づきを得たいときに有効。

構造化インタビュー  あらかじめ質問項目を決め、全員に同じ質問をする。比較・分析しやすいデータが取れる。  → 特定の仮説を検証したいとき、対象を広げたいときに有効。

セラピストの問診を思い出してください。初診で「どうされましたか?」と自由に語ってもらうのが非構造化、決まった評価項目を一つずつ確認するのが構造化。あなたは両方を、毎日使い分けているのです。

手法②:参与観察・エスノグラフィー ── 現場に入って見る

研究者が対象の集団や場に実際に入り込み、行動を共にしながら理解を深める手法です。

  • 発言だけでなく、日常の行動の背後にある「暗黙のルール」「習慣」「価値観」に触れられる
  • インタビューでは聞き出せない「当たり前すぎて語られないこと」「無意識の行動」まで観察できる

例:店舗で顧客の動線を観察して購買行動を理解する。デイサービスで利用者同士のやりとりを観察し、本当に求められている関わりを読み解く。時間と労力はかかりますが、極めて深いインサイトが得られます。臨床現場の観察眼を持つセラピストにとって、最も自然に力を発揮できる手法かもしれません。

手法③:言説分析 ── 言葉の使い方を読み解く

SNS・ブログ・レビューなど、オンライン上の膨大な「言葉」を分析し、語り方の特徴から文化的・社会的背景を読み解く手法です。

例:「母親 仕事復帰」でSNS投稿を分析し、育児とキャリアの両立をめぐる現代の価値観を抽出する。

どんな言葉が使われ、何が重要とされているか。ここから、ターゲット層が自社のサービスやカテゴリを「どう語っているか」が見えてきます。

AIが、質的研究のハードルを劇的に下げる

第7章でも触れたとおり、AIが最も貢献するのが、この質的データの領域です。

  • 文字起こし:インタビュー録音をテキスト化(※音声を外部に渡す際は、同意とプライバシーに最大限の注意を)
  • コーディング補助:大量の語りから、共通する「テーマ」「コード」を抽出する下案づくり
  • 言説分析:投稿群から、感情の傾向や繰り返されるトピックを整理する

ただし、ここでも鉄則は変わりません。AIが抽出した「テーマ」は、あくまで下案です。語りの本当の意味、文脈、行間は、人間が読み取らなければなりません。AIは「整理」を助けますが、「解釈」の責任は研究者にあります。そして何より──インタビューの生データや音声は、各論①・第2章の原則どおり、匿名化・同意の範囲を厳守してください。


試してみるプロンプト(質的データの構造化)

あなたは質的研究の分析に詳しい研究者です。 以下は、匿名化済みの自由記述(またはインタビュー抜粋)です。

  1. 繰り返し現れるテーマを3〜5個に整理し、それぞれに短い名前(コード)をつけてください。
  2. 各テーマを代表する語りの特徴を、要約で示してください(※原文の長い引用は避け、要約で)。
  3. ここから生成できる「次に検証すべき仮説」を2つ提案してください。
  4. あなたの解釈に含まれる可能性のある"読みすぎ"を、自己批判的に指摘してください。

【データ】 (匿名化した語りを貼る)


第9章のまとめ

  • 質的データの代表は、インタビュー・参与観察・言説分析
  • 構造化(検証)/非構造化(探索)を使い分ける。セラピストの問診と同じ構造
  • AIは文字起こし・整理・分析を加速するが、「解釈」の責任は人間にある

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