第3部|取得編 ―― データを集める

第7章 量と質、二つのまなざし

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この章の要点

  • データには「量的(数値)」と「質的(語り)」の二つがある
  • 数値は一般化に強く、語りは「なぜ」を深掘るのに強い
  • AIは、両方のデータの取得・整理を加速する。組み合わせると最強

数値だけでは、こぼれ落ちるもの

ここまで、主に「数値で測る」話をしてきました。けれど、現実には数値化できない大切な情報が、たくさんあります。

なぜこの人は、効果がありそうなプログラムを続けないのか。なぜこのサービスは、機能は劣るのに選ばれるのか。こうした「なぜ」の答えは、スコアの中にはありません。その人の語りの中にあります。

社会科学では、情報の扱い方を大きく2つに分けます。

  • 量的研究(Quantitative):数値化されたデータを統計的に扱い、一般化を目指す。客観性・再現性を重視。
  • 質的研究(Qualitative):言葉・行動・文脈を読み解き、人間の意味づけを深掘る。多様性・文脈性を重視。

二つは、対立しない ── 補い合う

「数値派か、語り派か」と対立させる必要はありません。むしろ、二つは補い合います。

  • 量的データは、「何が・どれくらい起きているか」を、広く・客観的に捉える(例:満足度の平均、利用継続率)
  • 質的データは、「なぜそうなるのか」を、深く・文脈的に捉える(例:継続できた人の語り)

たとえば、アンケートで「満足度が低い層」を量的に特定し(広く把握)、その層に質的インタビューで「なぜ満足できないのか」を聞く(深く理解)。この「広く→深く」の往復が、最も豊かなインサイトを生みます。

これは、セラピストにとって馴染み深い構造ではないでしょうか。評価スコア(量)だけでは患者さんは分からない。問診や生活の語り(質)と組み合わせて、はじめて全体像が見える。あなたは、量と質を統合する訓練を、臨床で積んできたのです。

AIは、質的データの扱いを激変させた

そして近年、AIの登場で最も変わったのが、この質的データの扱いです。

これまで、インタビューの文字起こしや、自由記述の整理、SNS投稿の分析は、膨大な時間がかかる作業でした。「やったほうがいいのは分かるが、手が回らない」領域だったのです。それが、AIによって一変しました。

  • 録音の文字起こし
  • 大量の自由記述から共通テーマの抽出
  • SNSやレビューの感情・トピックの分析

こうした作業を、AIは劇的に速くします。「数値化できないから諦めていた情報」が、扱える射程に入ってきたのです。

発展:APIとデータベースによる自動データ収集

データを集める方法は、アンケートの配布や手入力だけではありません。 『コーディング・システム開発編』の発展として、APIを活用してウェブ上のデータを自動で収集する方法もあります。

さらに、フロントエンドだけでなく、バックエンドとしてGoogleスプレッドシートやSupabaseなどのデータベースを用意し、そこにデータを直接収集・蓄積する仕組みを構築しておくと、その後のデータ活用や分析が劇的に便利になります。AIを活用すれば、こうしたAPI連携やデータベース接続のためのバックエンドコードも驚くほど簡単に実装できます。システム開発の知識を少し広げて、自動でデータが溜まる仕組みを作ることも、ぜひ視野に入れてみてください。

次章から、量的・質的それぞれの取得を、具体的に見ていきましょう。


試してみるプロンプト

あなたは混合研究法(量的・質的を組み合わせる方法)に詳しい研究者です。 わたしは「(テーマ。例:自費リハ利用者の継続率)」を調べたいです。 量的アプローチと質的アプローチを、それぞれどう使えば「広く把握して、深く理解する」ことができるか、具体的な調査の流れとして提案してください。 「まず何を量的に見て、次に誰に質的に聞くか」という順序も示してください。


第7章のまとめ

  • データには量的(数値)と質的(語り)の二つがある
  • 数値は「何が・どれくらい」、語りは「なぜ」に強い。二つは補い合う
  • AIは特に質的データの扱いを激変させた。諦めていた情報が扱える時代になった
  • APIやバックエンド(Supabase等)を活用した自動収集の仕組みを整えると、その後のデータ活用がさらに便利になる

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