第2部|問い編 ―― 分析の前に、問いを設計する

第6章 変数とアウトカムを設計する ──「ものさし」を選ぶ

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この章の要点

  • データの「型(変数の種類)」を理解すると、後の分析が的確になる
  • 連続・順序・名義という3つの「ものさし」を使い分ける
  • 「何を測るか(アウトカム)」の選び方が、研究と事業の説得力を左右する

データには「型」がある

研究デザインが決まったら、次は「何を、どんな数字で測るか」を決めます。ここで欠かせないのが、変数の種類(データの型)の理解です。地味ですが、ここを押さえると、後の分析でつまずかなくなります。なぜなら、変数の型によって、使える分析手法が変わるからです。

主な型は、3つです。

連続変数  数値として連続的に測れるもの。  例:記憶力スコア、反応時間、年齢、歩行速度、握力。  「平均」「差」を計算する意味があります。

順序変数  順番はあるが、間隔が一定でないもの。  例:「集中力:低い〜非常に高い」の5段階評価、痛みのNRS、満足度のリッカート尺度。  順番には意味があるが、「4は2の2倍」とは言えない、という性質があります。

名義変数  分類のラベルで、順番がないもの。  例:性別、居住地域、職業、診断名。  「割合」を数えることに意味があります。

「ものさし」を選ぶ、という発想

この3つを、わたしは「ものさし」と呼んでいます。同じ「集中力」を測るのでも、

  • 「集中できたテストの正答数」で測れば → 連続変数(細かいが、測定に手間がかかる)
  • 「集中できたかを5段階で自己評価」で測れば → 順序変数(手軽だが、解像度は粗い)
  • 「集中できた/できなかった」で測れば → 名義変数(最も手軽だが、情報量は最少)

どのものさしを選ぶかで、得られるデータの「解像度」が変わります。細かく測れば情報は豊かになるが、手間が増える。 この設計判断は、まさにセラピストが評価指標を選ぶときの感覚そのものです。MMSEで測るのか、もっと簡便なスクリーニングで測るのか。目的と現場の制約のあいだで、最適点を選ぶのです。

アウトカムの設計が、説得力を決める

変数の中でも、特に重要なのがアウトカム(結果指標)──「最終的に、何が良くなったと言いたいのか」です。

ここで陥りがちな罠があります。「測りやすいもの」を測ってしまうことです。たとえば認知機能サービスで、「脳年齢スコアが上がった」と示すのは簡単です。でも、利用者が本当に求めているのは、スコアでしょうか。それとも──

「買い物に一人で行けるようになった」「家族との会話が増えた」「社会参加に自信が戻った」

といった、生活の変化ではないでしょうか。事業の文脈でも同じです。本テキストの元になった議論でも、「顧客は『脳年齢の可視化』よりも『社会参加の自信回復』に価値を見出している」という仮説が示されていました。

測りやすい指標ではなく、意味のある指標を測る。

これは、ウェルビーイングを扱うわたしたちにとって、決定的に重要な設計思想です。生活機能やQOL、その人にとっての意味──測りにくいけれど大切なものを、どうものさしに乗せるか。ここにこそ、セラピストの専門性が光ります。

AIと一緒に、ものさしを設計する

変数とアウトカムの設計も、AIと相談できます。「この問いを検証するには、何を、どの型で測ればいいか」「この概念(例:社会参加)を測る、既存の評価尺度はあるか」を聞けば、候補を整理してくれます。

ただし、評価尺度についてはハルシネーション(実在しない尺度のでっち上げ)に注意してください。AIが挙げた尺度は、必ず一次情報(原著・公式サイト)で実在と妥当性を確認すること。これは『概論』から繰り返している、最も大切な距離感です。


試してみるプロンプト

あなたは研究の測定・尺度に詳しい研究者です。 わたしは「(測りたい概念。例:高齢者の社会参加への自信)」を、研究・事業の中で測定したいと考えています。

  1. この概念を測るための変数の候補を、「連続/順序/名義」の型ごとに整理してください。
  2. それぞれの測り方の「解像度」と「現場での手間」のトレードオフを表にしてください。
  3. この概念を測れる既存の評価尺度の候補があれば挙げてください(※実在が確実なものに限り、不確かなものは「要確認」と明記してください)。

第6章のまとめ

  • 変数の型(連続・順序・名義)で、後に使える分析手法が変わる
  • 「ものさし」選びは、解像度と手間のトレードオフ。セラピストの評価指標選びと同じ
  • 「測りやすい指標」ではなく「意味のある指標」を測る設計が、説得力を生む

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