第2部|業務活用編
第10章 プロンプト技法10選
この章の要点
- 代表的なプロンプト技法を知っておくと応用が利く
- セラピスト領域への当てはめを意識すると実用的
- 「正解の操作方法」より「問いを深める感覚」が大切
プロンプトは「問いのデザイン」
「どう聞けばいいか」によって、AIの返答の質は大きく変わります。この“AIへの指示”をプロンプトと呼びます。本章では、セラピスト領域に応用しやすい代表的なプロンプト技法を10個紹介します。
① Zero-shot Prompting(例なし推定)
最も基本的な使い方。例を与えず、そのまま質問する方法です。
「腰痛について説明してください」 「この論文を要約してください」 「自主トレメニューを考えてください」
最初はこれで十分。ただ、一般論になりやすいのが弱点です。
② Few-shot Prompting(少数例での推定)
例を少し見せてから推定してもらう方法。
「以下のような形式で症例報告をまとめてください: 例)背景→評価→介入→結果」
文体や形式を揃えたいとき、SOAP記録の統一、症例報告のテンプレート化に便利です。
③ Chain-of-Thought(思考の連鎖)
「ステップごとに段階的に考えてください」
と指示する方法です。臨床推論のように、
- 情報収集
- 仮説形成
- 検証
- 介入立案
を順番にAIに考えさせると、結論だけでなく推論プロセスが見えるようになります。
④ Generated Knowledge Prompting(知識生成)
「まず関連する知識を整理してから、その上で結論を考えてください」
と指示する方法。例えば、
「慢性腰痛に関係する心理社会的因子を整理してください。そのうえで介入案を提案してください」
のように、前提知識の整理→推論を分けます。臨床推論とほぼ同じ構造です。
⑤ Proactive Prompting(積極的な質問)
AI側にも質問させる使い方。
「情報が不足している場合は、こちらに質問してください」
と最初に伝えると、AIから「年齢は?」「活動量は?」「疼痛期間は?」と聞いてくるようになります。問診の練習、業務改善、キャリア相談などで有効です。
⑥ Score Anchoring(スコア係留)
数値基準を与える方法。
- 疼痛NRS
- FIM
- MMSE / MoCA
- Barthel Index
- 歩行速度
などを使って、「このスコアならどう考えるか?」を整理します。例:
「MoCA20点、注意機能低下あり、高齢独居男性への支援を考えてください」
評価指標をアンカーにすることで、漠然とした提案を防げます。
⑦ Virtual Parameter(仮想パラメーター)
架空の条件を設定する方法。
- 「もし通院頻度が半分になったら?」
- 「もし家族と同居していたら?」
- 「もし競技復帰を急いでいたら?」
条件を変えながら考えることで、臨床推論やケーススタディの幅が広がります。教育・研修に応用しやすい技法です。
⑧ Persona Prompting(人格付与)
第7章でも触れた「役割設定」と同じ系統です。
「あなたは◯◯です」
を最初に置き、視点を切り替えます。「優しいトーンの先輩PT」と「厳しめのスーパーバイザー」では、フィードバックの質が変わります。
⑨ Self-Critique(自己批評)
「あなたの回答に対して、自分自身で批判してください」 「弱点・改善点を3つ挙げてください」
と指示すると、AIが自分の回答を見直し、より精度の高いアウトプットを出してきます。論文要旨や勉強会資料のブラッシュアップに有効です。
⑩ Structured Output(構造化出力)
「次の項目に沿って出力してください:
- 概要
- 重要ポイント
- 注意点
- 引用元
- 想定される質問」
など、出力の構造を指定する方法です。テンプレートとして保存しておけば、毎回似た形式で結果が返ってきます。
セラピストは「問いを作る職業」
ここまで見ると難しそうですが、本質的には、
どう問いを立てるか
の話です。セラピストは本来、評価し、仮説を立て、情報を整理し、解釈する専門職です。つまり、
問いを作る仕事
そのもの。だからこそ、プロンプト設計はセラピストの思考と相性が良いのです。
試してみるプロンプト(複合型)
あなたは経験豊富なリハビリテーション科の指導医です。
【依頼】 これからお伝えする症例について、次の手順で考えてください。
- まず、症例の主要な臨床問題を3つ整理してください。
- それぞれに対し、考えうる原因仮説を最大3つずつ挙げてください。
- 仮説ごとに、検証のための評価項目を提案してください。
- 最後に、現時点で優先すべき介入を1つに絞り、その理由を述べてください。
- 終わったら、自分自身の回答に対する弱点を3つ挙げてください。
【症例】 (ここに匿名化した症例を貼り付ける)
第10章のまとめ
- 代表的プロンプト技法を10個押さえると応用が利く
- 役割・例示・思考プロセス・自己批評を組み合わせる
- 「正解の操作」より「問いのデザイン」を意識する