第2部|業務活用編
第9章 文脈と制約条件を伝える
この章の要点
- 情報が少ないと、AIは「一般論」になりやすい
- 文脈と制約条件を渡すと、出力の具体性が一気に上がる
- セラピストは本来「文脈を見る専門職」だからこそ、AIとの相性が良い
情報が少ないと「一般論」になりやすい
例えば、AIに対して、
「腰痛に対するアプローチを教えて」
とだけ聞くと、一般論が返ってきます。これは当然で、AI側からすると、
- 年齢
- 性別
- 活動量
- 職業
- 生活背景
- 心理状態
などがわからないからです。これは実際の臨床でも同じです。「腰痛」という言葉だけでは、情報がまったく足りません。
文脈を与えると、具体性が増す
例えば、
- 70代女性
- 慢性腰痛
- 不安感が強い
- 運動習慣なし
- 独居
- 買い物は徒歩
など、背景情報を加えると、AIの返答もかなり具体的になっていきます。これは生成AIが、
「文脈をもとに次の言葉を予測する」
仕組みだからです。どんな状況なのかを与えるほど、返答精度が上がります。
制約条件もかなり重要
さらに重要なのが、
制約条件
です。
- 1日にまとまった時間が作りづらい
- 家族と同居していて孫の世話をしている
- 来月旅行に行く
- 通院頻度は月1回
- 経済的に運動器具は買えない
- 関節リウマチがあり強い負荷はかけられない
どれだけ理想的な提案でも、「現実的に実行できない」と意味がありません。これは臨床でも同じです。AIも、どんな制約があるかを知ることで、より現実的な提案ができるようになります。
業務改善でも同じ
これは臨床だけではありません。業務改善を考えるときも、
- 昼休みに15分くらい空く
- スタッフが5人
- SNS運用担当がいない
- 資料作成が苦手
- 地方施設で人手不足
- 紙文化が強く電子化が進んでいない
など、文脈と制約条件によって提案内容はまったく変わります。「業務効率化したい」だけでは抽象的ですが、上記のような条件を追加すると、かなり具体的なアイデアが返ってきます。
AIは「魔法」ではなく「整理ツール」
時々、「AI使ったけど、なんか微妙だった」という声を聞きます。実は、その理由のひとつが、
AIに渡している情報量が少なすぎる
ことです。AIは魔法ではなく、「与えられた情報を整理する」道具です。背景・状況・目的・制約を追加するだけで、出力はかなり変わります。
「なんとなく」を整理する感覚
最初は、「自分でも何に困っているかわからない」こともあると思います。それでも大丈夫です。
- 「なんか最近仕事がしんどい」
- 「時間が足りない」
- 「勉強したいけど進まない」
くらいから始める。そして、AIと会話しながら、
- 何が問題なのか
- どんな制約があるのか
- 本当はどうしたいのか
を少しずつ整理していく。これはある意味、思考の言語化でもあります。
セラピストは本来「文脈を見る仕事」
セラピストは本来、症状や検査結果だけを見る仕事ではありません。生活・心理・環境・社会背景・行動・価値観などを含めて支援を考えています。つまり、
文脈を見る専門職
です。だからこそ、生成AI活用でも、「文脈を与える」という感覚はセラピスト的な思考と相性が良いのです。
試してみるプロンプト
あなたは臨床経験20年のベテランPTです。
【患者情報】
- 72歳女性
- 慢性腰痛(5年以上)、画像所見では軽度の椎間関節症
- 不安感が強く、過去の経験から運動恐怖あり
- 同居家族なし、買い物は徒歩で15分
- 通院頻度は2週に1回
- 経済的に運動器具の購入は難しい
【制約条件】
- 1日合計15分以内の自主トレで実施できること
- 自宅にある椅子・タオル・壁のみを使うこと
- 痛みを誘発しすぎないこと
【依頼】 この方への自主トレメニュー案を3つ、目的・方法・回数・注意点を含めて提案してください。
第9章のまとめ
- 情報が少ないとAIは一般論になる
- 文脈(背景)と制約条件をセットで渡すと一気に具体化する
- 「文脈を見る」セラピストとAIは、思考様式が近い