第1部|土台編 ―― なぜ、セラピストが「データを扱う側」になるのか
第3章 データ活用の全体地図 ──「問い→取得→分析→伝達」
この章の要点
- データ活用は、4つのステップが循環する「旅路」として捉える
- AIは全ステップを加速するが、各ステップで「任せる/確認する」の判断が要る
- 最初と最後(問いと伝達)こそ、人間の仕事が濃く残る
データには「旅路」がある
「データ分析」と聞くと、多くの人が「統計ソフトで計算する場面」だけを思い浮かべます。けれど実際には、その前後に長い道のりがあります。本コンテンツでは、データ活用を4つのステップの旅路として捉えます。
- 問い(Question):何を知りたいのか。仮説を立て、何を測るかを設計する
- 取得(Collection):必要なデータを、量的・質的に集める
- 分析(Analysis):データを整え、関係を読み解き、因果を吟味する
- 伝達(Translation):結果を「伝わる形」に変え、研究・事業・発信へ届ける
この4ステップは、一度きりの直線ではありません。伝達して得られた反応から、また新しい問いが生まれる。ぐるぐると回る円環です。スノウが地図を描き、井戸を止め、効果を確かめ、また次の問いへ進んだように。
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AIは、全ステップを加速する
本コンテンツの主役である生成AIは、この4ステップのすべてを加速します。
| ステップ | AIに任せられること | 人間が引き受けること |
|---|---|---|
| 問い | 仮説の言語化、先行研究の整理、設計のたたき台 | 「本当に知りたいこと」の決定 |
| 取得 | アンケート設計、設問の推敲、文字起こし | 倫理・同意、現場での関係構築 |
| 分析 | データ整形、計算、作図、手法の提案 | 手法の妥当性、結果の解釈、因果の判断 |
| 伝達 | 図表・レポート・スライドの生成、文章化 | 何を主張するか、誰に何を届けるか |
ここで気づいてほしいのは、旅路の「真ん中」(取得の作業・分析の計算)ほどAIに任せやすく、「両端」(最初の問いと、最後の主張)ほど人間の仕事が濃く残るということです。
コーディング・システム開発編で「客席(フロントエンド)と厨房(バックエンド)」という話をしました。データ活用でいえば、計算という"厨房"はAIに任せ、何を出すか・どう届けるかという"客席"の判断は人間が持つ。この役割分担が、速さと正しさを両立させます。
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AIは「共同研究者」になる
『概論』では、AIを知的補助輪と呼びました。ローカルファイル活用編では共同作業者へ、コーディング・システム開発編では一緒に作る相棒へと近づきました。
本コンテンツを通じて、その存在はさらに進化します。データの旅路を共に歩むAIは、いわば──
あなたの隣に座る、24時間働く"共同研究者(リサーチパートナー)"
です。先行研究を一晩で整理し、面倒なデータ整形を引き受け、何百行もの計算を一瞬で回し、グラフを描き、原稿を下書きする。優秀な共同研究者です。ただし──最終的に論文に名前を載せ、結果に責任を持つのは、あなたです。この距離感が、本コンテンツの最後まで貫く背骨になります。
試してみるプロンプト
あなたは経験豊富な研究者であり、データ活用の指導者です。 わたしは「(あなたが今、気になっているテーマ。例:高齢者の運動習慣と認知機能の関係)」について調べたいと考えています。 これを「問い→取得→分析→伝達」の4ステップに分解し、各ステップで具体的に何をすればよいか、初心者向けのロードマップとして整理してください。 各ステップで「AIに任せられること」と「自分が判断すべきこと」も分けて示してください。
第3章のまとめ
- データ活用は「問い→取得→分析→伝達」が循環する旅路
- AIは全ステップを加速するが、各ステップで「任せる/確認する」の判断が要る
- AIは"共同研究者"になる。ただし、結果に責任を持つのは人間